能登半島地震の発生直後から、食品や日用品などのメーカーが被災地への救援物資の提供に動いている。国による「プッシュ型支援」の一環で、これまでに多くの企業が石川県内の救援物資の搬出拠点などに物資を送り届けた。企業独自の判断で被災地に物資を届けている例もあり、被災者支援の動きは今後も広がりそうだ。
大手製パン業者の業界団体「日本パン工業会」は2日早朝、国からの支援の要請を受けた。山崎製パンなど大手3社は5日までに、計約20万個のパンを石川県内に運んだ。パンは搬出拠点の石川県産業展示館(金沢市)に各社が運び、能登半島北部の避難所への配布は自衛隊などが担当した。
日本パン工業会の阿部勲専務理事は「必要な人に行き渡るように、十分な量を届けるべく動いている」と説明する。
日用品メーカーが加盟する「日本衛生材料工業連合会」も1日の地震発生直後に国から要請を受け、これまでに石川県内へ子ども用と大人用の紙おむつ計約6万枚、生理用品約7万5000枚、マスク約10万枚を届けた。
また、イトーヨーカ堂はANAホールディングスと協力し、航空便で500ミリ・リットルのペットボトルの水、約2万本を石川県に届けた。
国によるプッシュ型支援は、自治体からの要請を待たずに国の判断で被災地に物資を届ける仕組みで、2011年の東日本大震災の際に救援物資の供給が遅れた教訓から導入された。国は各業界団体などを通じて企業に救援物資の提供を求め、企業は自社の物流網を通じて拠点へ物資を運ぶ。
プッシュ型支援を進めるため、政府は9日に、23年度予算で残る予備費から47億4000万円の支出を閣議決定する方針だ。
一方、国の要請がなくても、企業が独自に被災地支援に動いているケースもある。
エステーは地震発生後、使い捨てカイロ7万2000枚を被災地に送ることを決めた。5日時点で7200枚を石川県七尾市に届けたという。広報担当者は「年始はトラックの稼働率が高くて輸送手段の確保が難しかったため、乗用車などで運んだ」と話している。
原文出處 讀賣新聞