台湾の蔡英文総統は9日、台北の総統府で訪台中のフランス上院外交・国防委員会のゲリオ副委員長が率いる仏議員団と会談した。最近、欧米や日本の要人が相次いで台湾を訪れており、国際社会における台湾の存在感が高まっている。蔡政権が推進する民主主義と自由を重視する価値観外交が奏功し、中国の外交圧力が効かなくなりつつあることなどが背景にあるとみられる。
仏の国会議員団は昨年10月と12月にも訪台している。蔡氏はこの日、仏議員団団長のゲリオ氏に「大綬卿雲勲章」を授与し、これまでの仏台関係への貢献をたたえた。その上で「これからはさまざまな分野で協力関係が深まることを期待する」と述べた。ゲリオ氏は中国が台湾に軍事的挑発を繰り返していることを念頭に「抑圧者に対抗し、自由の促進を支援することを約束する」と強調した。
台湾は中国の圧力により国際社会で長年孤立し、世界の主要国と正式な外交関係を結べないでいる。中国はさらに、各国の「親台派」政治家にさまざまな圧力と嫌がらせを加え、台湾訪問を阻止してきた。
2020年1月、訪台を計画していたチェコのクベラ上院議長(当時)は中国大使館から訪問を断念するよう迫られ、文書でも激しく恫喝(どうかつ)された。クベラ氏はその後急死し、チェコ国民の対中感情が悪化した。クベラ氏の後任となったビストルチル氏は同年8月、政治家や企業家ら約90人の訪問団を率いて訪台を断行した。
中国政府はチェコ政府に抗議したが、有効な制裁を打ち出せなかった。一方で蔡政権は、自由と民主主義の価値観を共有する国々との関係強化に力を入れ、訪台する各国の議員団が21年以降急増した。
特に、今年2月のロシアによるウクライナ侵攻後、ウクライナを支持する民主主義陣営の国々は、中国の脅威にさらされる台湾を一層重視。台湾の外交部(外務省に相当)関係者によると、7月から8月にかけても複数の外国議員団の訪問が予定されているという。
国際政治評論家、呉嘉隆氏は「最近、欧米などの主要な民主主義国家の世論調査をみると、台湾支持の意見が圧倒的に多い」と説明した上で、「台湾を訪問すれば国内で支持を集めやすく、選挙が近くなると、台湾行きを希望する議員が増える傾向にある」と指摘した。
原文出處 產經新聞