パリの国連教育科学文化機関(ユネスコ)本部で2月24~26日に開かれた文化行事で、招待されていたウイグル人言語学者が直前になって主催者から参加を拒否されたことが分かった。この催しには中国の人工知能(AI)関連企業がスポンサーとして参加しており、中国への配慮からユネスコ側が排除を求めたという指摘が出ている。
この行事は「みんなのための言語テクノロジー」と題して3日間、討論会や研究報告を行うもの。ユネスコ職員と専門家が合同で組織委員会を作り、インドネシア出身の日本の大学教授が代表を務めている。先端技術を使って多様な言語の教育や社会交流を進めることが狙いで、今回は2度目の開催だった。
参加を拒否されたのは、新疆ウイグル自治区出身のアブドウェリ・アユップさん(51)。米国留学後、地元でウイグル語教育の普及に努め、2013年から1年3カ月間、当局に拘束された。現在は中国を出国し、ノルウェーに在住する。
アユップさんは1月17日、組織委から2月25日の討論会にパネリストとして登壇するよう招待を受けた。その後、「できるだけ政治色を出さない」必要があるとして、出演を断る通知が来た。その代わりにポスターを掲示する関連企画への参加を求められたが、24日に会場入りした後、やはり参加は認められないとする電子メールが届いた。「直前の通知で申し訳ないが、この決定は我々にはどうすることもできない」とあった。アユップさんが24日、中国人識者が討論会に出た際、質疑応答で中国でのウイグル語の扱いを尋ねたのが原因とみられる。
アユップさんは「組織委に理由を聞いても、明確な説明がなかった。『技術的な誤解があった』と言われたが、意味が全く分からない」と話す。会場で中国人関係者に取り囲まれ、「家族はどこにいるのか」などと問い詰められたこともあったという。
この催しでスポンサーに名を連ねる中国企業アイフライテック社は、AIによる音声認識を手掛けている。新疆ウイグル自治区で当局が行っているデジタル監視に関与しているとされ、2019年には米国で制裁対象に指定された。
関係者によると、アユップさんの参加取消しは組織委員会でユネスコ側委員が強く要求した。「彼らは日程表を見たときから、アユップさんの参加に否定的だった。アユップさんが24日の質疑応答で中国の言語弾圧に触れると、『ユネスコの承認が出ない』と言って排除するよう組織委内で圧力をかけた」という。
ユネスコのタウフィク・ジェラッシ事務局長補(コミュニケーション・情報担当)は産経新聞に対し、「この種の会合で、ウイグル語に関する諸問題が取り上げられるのは当然のこと。アユップさんの発言が阻止されたとすれば、まったく正当化できない」とする声明を出し、排除はユネスコの公式決定ではないと強調した。事務局は内部調査を行い、事実関係を明らかにするとしている。
原文出處 產經新聞