中国による台湾侵攻をテーマにした禁断のドラマが台湾で制作され、注目されています。描かれたのは、中国が本格的な侵攻を前にさまざまな工作を仕掛け、台湾を追い詰める様子です。そのドラマ制作の狙いとは─。
先週、台湾の中枢・台北市内では…
渡辺容代記者(台北市、24日)
「総統府の前の道路を封鎖し、ドラマの撮影が行われています。普段は車通りの多い道路上に一台も車が走っていません」
製作費は10億円超え。台湾政府も全面協力し、大がかりなドラマの撮影が行われていました。そのドラマが描くのは…“中国軍による台湾侵攻”。台湾ドラマでは取り上げられる事のなかった異例のテーマです。
7月に解禁された予告編は、“中国軍機が台湾周辺上空で消息を絶った”とのニュースから始まり、“中国軍が機体の捜索を口実に台湾を海上封鎖”。サイバー攻撃により金融システムが麻痺し、台湾内部の協力者らが暴動を起こし始めるというシナリオです。専門家らの想定に基づいていることから、ドラマは大きな反響を呼んでいます。
ドラマには俳優の高橋一生さんも出演。中国での活動への影響を懸念し、企画から降りた俳優や監督もいたといいます。その撮影現場を見てみると…
記者
「こちらのプラカードには、“両岸(中国と台湾)はひとつの家族”という文言が書かれています」
ほかにも、台湾政府に対し、中国を挑発しないよう要求するプラカード。中国政府が手配した協力者たちが、これを掲げて、総統府に押しよせるシーンの「小道具」です。さらにドラマには次のような場面も…
中国のアナウンサー(ドラマ予告編より)
「台湾独立に向け活動する者を見かけたら必ず中国軍に通報」
そしてハッキングにより台湾の街中のモニターが一斉に中国の放送に切り替わります。
これは2022年、中国が台湾への圧力を強めた際、駅やコンビニの電光掲示板がハッキングされた事がモデルとなっています。
台湾統一を目指す習近平政権。軍事力行使も排除しないとしていますが、さまざまな秘密工作を駆使し、内部崩壊を狙っているともされています。
◇
ドラマで生々しく描かれた中国の工作活動。制作に協力した専門家は、これらはすでに始まっている可能性が高いとみています。
国防安全研究院 蘇紫雲所長
「ビジネス、軍隊、宗教、反社会勢力などへの浸透がある。これらはすべて中国の戦術だ。中国は人々の心の弱みをついて浸透する」
台湾の中に中国に同調する人を増やすことも目的だといいます。その舞台の一つは「お寺」です。
この日、台中市にある道教の寺院で行われていたのは、霊媒師を通じて神のお告げを聞く儀式。この寺院では、去年、中国・福建省の寺院での行事に参加するなど積極的に中国を訪れてきました。ただ、その行事では“中台は一つの家族だ”という垂れ幕や、宗教が“中台を団結させる絆だ”とするスローガンも…。
台湾政府はこうした行事を通じてお寺や信者を「中国寄り」にする工作が行われているとみています。
台湾侵攻ドラマの予告編の最後には、草むらから中国軍の兵士らが静かに姿を現します。
ドラマ「零日攻撃ZERO DAY」プロデューサー 鄭心媚さん
「このシーンの意味は、(中国の)浸透はすでに人々の周りに存在しているということ。台湾の人々に“戦争”はもう始まっているという注意を呼びかけたい」
ドラマのプロデューサーは、台湾が直面する脅威に関心を高めたいと話しています。
原文出處 日テレNEWS