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吉野源三郎の孫がみた「君たちはどう生きるか」 宮崎駿監督との秘話

「おそらく、わけがわからなかったことでしょう。私自身、わけがわからないところがありました」2023年2月27日夜、東京都内のスタジオで上映された映画「君たちはどう生きるか」の初号試写。

2時間を超える本編が終わり、米津玄師の歌う「地球儀」というタイトルのピアノバラードが流れ、エンドロールが終わった瞬間、明かりがつき、宮崎駿監督のコメントが読み上げられた。

客席のあちこちから軽い笑い声が聞こえてきた。映画のあまりの展開の速さと、盛り込むだけ盛り込まれた情報を消化しきれず、ぼうぜんと座り込んでいた私も、その言葉で我に返った。何とも宮崎監督らしい言い方だな、とそのときは思った。

試写会は主にキャスト・スタッフ向けで、SNSなどで出演がうわさされていた有名俳優の姿もあった。会場となったスタジオに案内掲示などは一切なし。場内では、内容は無論、見たことすら口外無用を言い渡された。

そんな場に、なぜ私と両親が呼ばれたのかといえば、父が「君たちはどう生きるか」の著者・吉野源三郎の長男で、私が孫にあたるからだ。

スタジオジブリから来た連絡
宮崎駿監督の10年ぶりとなる新作長編映画のタイトルが明らかになったのは、今から6年前の17年10月28日、ちょっとしたハプニングによってだった。早稲田大学大隈記念講堂で開かれた半藤一利さんとの対談イベントで、宮崎監督が突然「題名がですね、吉野源三郎の『君たちはどう生きるか』という本からそのまま勝手にもらいまして」と明らかにしたのだ。

映画「君たちはどう生きるか」のタイトルのもとになった同名の本は、戦前~戦後に活躍した文化人・吉野源三郎の著作です。源三郎を祖父にもつ吉野太一郎記者が、映画を入り口に、本のメッセージに改めて向き合います。

この話題はネットニュースでたちまち話題になったが、驚いたのは私の父だった。

「何か知ってるか? 初めて…

原文出處 朝日新聞