経済安全保障に関する重要な機密情報の取り扱いを有資格者のみに認める「セキュリティー・クリアランス(SC、適格性評価)」の法制化に向けて、特定秘密保護法を改正する案が政府内で浮上していることが29日、分かった。複数の政府関係者が明らかにした。政府は早ければ来年の通常国会に関連法案を提出する方向で調整しており、今年秋から議論を本格化させる。
SCは、機密情報へのアクセスを一部の民間研究者・技術者や政府職員に限定する制度。軍事転用が可能な技術や、民間の国際競争力に関わる重要な情報が国外に流出することを防ぐ狙いがある。ただ、昨年5月に成立した経済安全保障推進法にはSCの規定がないことから、法制化が課題となっている。
平成26年に施行された特定秘密保護法は、①防衛②外交③スパイ活動などの特定有害活動④テロ―の4分野に関わる国の機密を「特定秘密」に指定して漏洩時の罰則を定めている。SCとは法律上の「親和性が高い」(政府関係者)とされ、同法を改正して経済安保に関する情報を対象に加える案も有力視されるようになった。
一方で、同法は「わが国の存立に関わる外部からの侵略」などを念頭に置いているため、対象を経済分野へ広げることに対する異論もある。また、成立時に野党などが強く反発した経緯があり、対象拡大の政治的ハードルも高い。政府は引き続き経済安保法などとの整合性を吟味しつつ検討を進める。
岸田文雄首相は今年2月にSCの制度化に向けた有識者会議を設置し、「今後1年程度をめどに可能な限り速やかに検討作業を進める」と表明した。6月には有識者会議が中間論点整理を公表した。
政府は欧米の主要国と安保分野を含む先端技術の共同研究を推進しているが、SCを欠く日本企業が研究の場から排除されかねないとの懸念は根強い。制度化の遅れに対し、与党内には「来年の通常国会での法案提出は必須だ」(閣僚経験者)という危機意識が広がっている。
原文出處 產經新聞