相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者ら45人が殺傷された事件から、26日で6年になる。今春、園に設置された石碑には、遺族有志の願いが刻まれている。誰にでも優しく、誰もが安心して心穏やかに過ごせる社会に――。犠牲になった美帆さん(当時19)の母親は、碑文の原案の一つを作った。思い出すのはつらくても、忘れてほしくないから。
「やっと肩の荷が下りたかな」。68回目の月命日となった3月26日。事件後に建て替えられた園の広場に石碑が設置され、美帆さんの母親は取材に声を震わせた。2020年3月に元職員の植松聖死刑囚(32)の死刑判決が確定した後、遺族有志が10回ほど集まり、母親や他の遺族、代理人弁護士らが持ち寄った原案を1年以上かけて推敲(すいこう)してきた。
石碑に刻む言葉は重い。あまりに凄惨(せいさん)な事件の中身と、差別的な犯行動機をどこまで具体的に書くか。どうすれば事件を知らない人の心にも響くのか。家族を失った悲しみは同じでも、遺族の考え方はそれぞれ。事件を忘れたい人もいる。母親は裁判が終わってもなお事件と向き合い、原稿用紙に向かった。
津久井やまゆり園の入所者ら殺傷事件
2016年7月26日未明、相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」の入所者19人が殺害され、職員を含む26人が重軽傷を負った。殺人罪などに問われた元職員の植松聖(さとし)死刑囚(32)が死刑判決を受け確定したが、今年4月に植松死刑囚側が再審請求した。確定判決は「重度障害者を殺害すれば不幸が減る」などと考えたことが動機と認定した。
原文出處 朝日新聞