新型コロナウイルスの感染が急拡大している南米ペルーで足止めされ、日本に戻れない日系ペルー人の女性がいる。静岡県熱海市在住で、30年近く暮らしてきた日本への帰国を望むが、国全体に厳しい外出制限が敷かれ、首都にも戻れない八方ふさがりだという。
足止めされているのは、日系3世の西岡ルイサさん(60)。生まれ育ったのは首都リマから北に約1千キロ離れた同国北部ピウラ県のスヤナという町だ。
ピウラ県在住のジャーナリスト、セサル・フロレス・コルドバさん(39)によると、ピウラ県は同国でもコロナの感染が最も深刻な地域の一つで、1日に平均60人が死亡している。6月14日にはペルーのビスカラ大統領も現地を視察した。
西岡さんは1991年に来日し、スーパーや旅館で働いてきた。日系ペルー人の夫とともに息子2人を育て、日本の永住権を持つ。夫は8年前、亡くなった。
ペルーに里帰りしたのは昨年9月。家族でリマに所有するアパートの売却のためだった。2月には日本に帰る予定だったが、日本でコロナの感染が拡大していると聞き、滞在を延ばした。父の追悼ミサが3月に故郷で予定されているという事情もあった。
ミサのためにスヤナを訪れた直後の3月15日に国家緊急事態令が出された。翌日から国境が封鎖され、国内移動も制限された。姉と2人で家を借り、週に1度、食料品を買いに出るだけの籠城(ろうじょう)生活が始まった。
闇営業のバスに感染リスク
ペルーでは、4月からコロナが猛威を振るい始めた。人口約3200万人の同国で、6月22日時点で感染者約25万人、死者約8千人に至っている。
近所の修理工は、病状が悪化したため、バイク型タクシーで病院に向かったが、着いた時に既に亡くなっていたという。
原文出處 朝日新聞